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“刀剣ブーム”の裏で深刻な刀匠の後継者不足 「二次元」とのコラボで活路
正宗、虎徹、菊一文字、陸奥守吉行…これらが刀剣の名称だと分かる人は多いだろう。では、へし切長谷部、鶴丸国永、鳴狐、歌仙兼定はどうか。この刀剣の読みや逸話をそらんじられる人は、かなりの歴史通か、『刀剣乱舞』のファンではないだろうか。
室町時代より続く刀匠で、靖国神社や熱田神宮などに刀を奉納している“二十六代藤原兼房”氏も、昨今の刀剣ブームを実感しているひとり。「月に一度、関鍛冶伝承館で行われている公開錬があるのですが、以前と比べて見に来られる女性の方が増えました。女性ひとりで見学に来られる方もいるほどです」(藤原氏)
刀匠の卵たちが臨む、5年に渡る過酷な修行期間
「問題となっているのは刀匠の減少です。平成元年に刀匠会に登録していたのはおよそ300人でしたが、今では188人に。しかも超高齢化が進んでいます」と現状を吐露。では、文化の担い手となる若手の育成はというと、そこは“刀匠”という伝統文化ゆえの障壁があると言う。
「刀匠になるには、師匠のもとで5年以上の修行が必要となり、しかも完全な無給。なので、一度社会に出てお金を貯めるなり、家族のサポートがないと修行を続けるのは難しい」と坪内氏。また、刀匠は国家資格であり、年に1回、8日間かけて行われる試験に合格する必要がある。さらに、それらを突破した後も独立開業して仕事場をもたなければならず、職場を準備するだけでも1千万円以上はかかるとも。「昨今、刀剣ブームで刀匠への入門希望者も増えています。しかし、修行を続けられる人は非常に少ない」と坪内氏。
ヱヴァンゲリヲンや魔法少女ともコラボも! 二次元と伝統文化の融合
坪内氏によれば、刀は一振り数十万から数百万するため、いかに刀剣ブームが盛り上がろうとも、なかなか購入には結びつかない現実も。
「次世代の刀匠を育てるのと同じように、刀を“買う人”を育てないといけない。そのため、若い人をこの世界にいかに呼び込み、どうやって育てるかが重要。この業界の前の世代は、そこをおろそかにしていた」と自戒を込めて坪内氏は語った。
そこで、少しでも若者に興味を持ってもらおうと『全日本刀匠会』がHPに掲載しているのが、漫画『魔法の刀匠 鍛冶屋☆シスターズ』…!? この漫画、刀剣好きの女性3人が世界を救うため魔法の力を与えられる、というストーリー。魔法少女たちは強くなるために刀匠の知識を学ぶ必要があるため、漫画を読み進めると、刀匠の世界観や知識を自然と学ぶことができる、というツボを押さえた力作。ぜひ一読してほしい。
ブームの陰で刀匠界の課題は山積み…しかし光明も
「刀剣ファンは確実に育っています。特に30代の女性は行動力もあって頼もしい限り。将来は、そうした方に“刀剣の購入”に興味を持っていただければ」と同氏。以前は、父親が刀を買おうとしても家族に止められることが多かったようだが、今後、母親や娘の理解があれば、刀剣をより購入しやすくなるはず。「高い刀を買わせることが目的ではありません。かつて日本には、出産のお祝いや、嫁入り道具として“お守り刀”を贈る文化がありました。そうした文化を継承していくためにも、まずは刀剣への理解者をひとりでも増やすことが大切です」(坪内氏)